Åke Holm Vase
¥110,000
本作は、Åke Holm(アーケ・ホルム)がキャリアのごく初期、1928年から1932年にかけて制作した希少な花器です。伸びやかな器体に、瑞々しいタッチで一羽の鳥と植物が描かれています。簡潔な線で描かれた鳥の姿は、日本の大津絵にも通じるような、素朴でどこかユーモラスな雰囲気を湛えています。その飄々とした表情と伸びやかな筆致が、見る者の心を和ませる、屈託のない民芸的な魅力を生み出しています。
底面に記された「Holm Höganäs」という署名は、Höganäsbolaget(ヘーガネス社)のシェールファブリーケン(Kärlfabriken)閉鎖を機に、彼が弟のErnst “Atte” Holm(エルンスト “アッテ” ホルム)と共に「ホルム兄弟の美術陶磁器工房(Bröderna Holms Konstkeramikfabrik)」を設立した、わずか4年ほどの共同経営時代の特徴を示しています 。この時期の制作は分業制で、経験豊富なろくろ師であったアッテが成形を、そしてアーケが装飾と施釉、焼成を担うというかたちでした 。
この花器に見られる絵画的で装飾豊かな作風は、彼が青年期に12年間勤めたシェールファブリーケンの製品や、技術専門学校で指導を受けた師、Albin Hamberg(アルビン・ハンベルク)が得意としたユーゲントシュティール様式の影響を色濃く反映しています 。やがて彼が確立する、旧約聖書を主題とした重厚でモニュメンタルな彫刻作品の世界とは大きく趣を異にしますが、本作はまさに、アーケ・ホルムが彫刻家としてのアイデンティティを確立する以前の、若き日の装飾への純粋な関心と、作家としての瑞々しい原点を示す、大変貴重な一点といえるでしょう。
ヒビや欠けもなく良いコンディションです。
h19.5 (cm)
1927-1932
在庫1個
Åke Holm (1900-1980)
スウェーデンの陶芸家で彫刻家。彼はHöganäsbolagetでの職を経て、自身の工房を1928年に開設しました。当初は不況を切り抜けるために土産物を作っていましたが、次第に芸術的な聖書の人物像や磁器の動物フィギュアを制作し始めました。彼の作品は1950年代から60年代にかけて聖書のモチーフが主流となり、そのスタイルは抽象的で洗練されたものに進化しました。世界的な名声は高まっていきましたが、彼は故郷Höganäsに留まることを選び、その作品の多くは地元Höganäs museumに寄贈されました。
【自身の工房で一人で作り続けた作品は全て一点物となっています】