Lisa Larson Unique Piece
¥700,000
透明釉の下に息づく街の記憶
量産品の《Gamla stan》が鮮やかな青と金で構成された“祝祭の街並み”だとすれば、この陶板はその静かな原風景のようです。釉薬は淡く、深い緑と灰青が溶け合い、窓の奥にわずかな透明感を残します。筆の跡や釉の流れがそのまま残り、窓枠や扉の縁に柔らかな濃淡をつくっている。全体に落ち着いた調子をもちながらも、釉薬の下から土の温もりが透けて見えます。
特に印象的なのは、左から二番目の建物の扉。量産版では平面的に処理されていますが、この試作品では扉の表面に丸い装飾が並び、一つひとつに釉薬が溜まって陰影を生んでいます。焼成の過程で輪郭がわずかに滲み、金属飾りのような質感を帯びています。量産化で省略されたこの意匠は、リサ・ラーソンが造形の密度と印象の重さを探っていた痕跡といえます。
裏面にはサインや工房印がなく、吊り金具のみが付されています。外販を想定せず、釉薬の発色や収縮を確かめるために焼かれた釉薬実験段階の試作品と考えられます。形状はすでに完成形に近く、発色や焼成条件を検証する過程の一点だったのでしょう。
量産品が均整と明快さを備えた完成形なら、この陶板はその直前、手の試みと偶然がまだ息づいていた時間の記録。釉薬が半透明の層で光を吸い込み、旧市街の空気のような静けさをとどめています。
ヒビや欠けもなく良好なコンディションです
W28×28 (cm)
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SKU: 20240512g3/111 カテゴリー: ALL ITEMS, Lisa Larson, 北欧の陶板 , Lisa Larson Unique Piece, Lisa Larson Prototyp タグ: art
在庫1個
Lisa Larson(1931–2024)
“猫のマイキー”で知られるリサ・ラーソン──けれど世界では、自由な造形で評価されたスウェーデンを代表する陶芸家として語られています。







