Lisa Larson Unique Piece

1972年にデザインされた《Eva（エヴァ）》は、「Adam & Eva」シリーズの女性像として知られています。本作はその量産に先立ち制作された試作品とみられ、全体に厚みがあり、胴から脚への移行部に手の圧痕が残っています。量産品の鋳込み成形とは異なり、粘土の押し出し跡や収縮の歪みがそのまま形にとどまり、手で作られた感覚がまだ整えられる前の素地に息づいています。

最も大きな違いは、顔立ちと衣装の表現です。量産品では微笑を湛えた穏やかな表情に仕上げられていますが、この試作品では輪郭が簡略化され、表情も定まっていません。髪型も量産版の柔らかなカールではなく、筆で荒く塗られた線描に近い。服装の柄も大きく異なり、量産品が鮮やかな色の水玉模様をもつのに対し、本作は灰褐色や青灰を基調にした落ち着いた色調で、釉薬の濃淡がそのまま模様を形づくっています。筆の勢いが強く、釉の溜まりや抜けがそのまま残り、いくつかの水玉は輪郭が崩れています。

こうした差異は、量産前の釉薬試験や彩色検討の段階を示すものと考えられます。量産品の鮮やかで均一な発色に比べ、本作の釉層は薄く、色の滞留や気泡が見られます。底部にはGustavsbergの工房印がなく、手書きで「LISAL」と記されており、まだ製品コードやモデル番号が確定していない時期の作品であることがわかります。

作家と工房のあいだで、手の感触をどこまで量産に移せるか、その探求の跡が、静かにとどまっています。

ヒビや欠けもなく非常に良いコンディションです。

H22 cm

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