Lisa Larson Unique Piece

量産版の《Thalia（タリア）》では線描的に整理された顔が特徴ですが、この試作品にはまだ手の感触が息づいています。顔立ちは深く刻まれ、兜の装飾や肩の起伏も丁寧に残されており、のちの量産化で削ぎ落とされる前の姿が伝わります。釉薬は落ち着いた緑灰色で、部分によって光沢がわずかに揺れ、発色の試みが感じられます。

フォルムは完成品と異なりながらも、壁厚のばらつきが少なく、手慣れた成形の確かさがあります。粗い原型というより、造形と釉薬の調整を並行していた段階のものと考えられます。底面には工場印がなく、口縁の処理に手作業の跡が見える点も特徴的です。釉薬や造形の反応を確かめるため、工房内で試験的に焼かれた一点とみられます。

量産版の均整が完成の静けさをもつとすれば、この試作品には制作の息づかいが残ります。釉薬の揺らぎや刻まれた線が、作り手の思考の跡としてそのまま表面にとどまり、形が定まる直前の時間を静かに映しています。

ヒビや欠けもなく非常に良いコンディションです。

φ10 H11 cm
1960

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