Rut Bryk Kuusi
¥1,900,000
Rut Bryk(ルート・ブリュック)の「鋳込み成型(スリップ・キャスティング)」という技法を用いた陶板作品です。
ルートは幼少期に家族で夏の時期を過ごしたカレリア地方の風景をモチーフとした作品を発表します。カレリア地方の建物、正教会などの宗教遺産、自然の風景が陶板作品として作られていきました。その中の一つが”Kuusi=トウヒの木”を描いたもので、木にフクロウがいるもの、鳥がいるものなど様々な形で描かれました。こちらの作品はそのヴァリエーションの一つで、クリスマスツリーとして飾り付けられた様子が描かれたものです。クリスマスのオーナメントをたくさん飾り付けられたクリスマスツリー、幸せ溢れる仕上がりです(オーナメントに”Rut”,Tapio”と自分と夫の名前が入っています)。しかしながらルートがカレリア地方に滞在したのは、夏の間だけであって冬のクリスマスの時期ではないはずです。幼少期にルートが学校で発表した「イタリア旅行の思い出」を綴った日記、『初日はゴンドラで街を見て回るのが一番です。夜明けの光のように街全体が赤い光に包まれて….』と旅行の始まりから詳しい描写があります。またルクレツィアというイタリア人の女の子と過ごしたことも描かれており、『ルクレツィアと私は真夜中の大聖堂のミサに出席しました。他の全てを忘れたとしてもあの夜は決して忘れません。素敵なオルガンの音が遠くから響き渡り…』とあるのですが、この旅行記は全て創作です。イタリア旅行を夢見ていたルートが作った物語でした。この作品も「幼少期の思い出が沢山詰まったカレリア地方でクリスマスを過ごせたら..」という物語を作品に込めたものなのかもしれません。
“She told wonderful stories. Even an ordinary event became exciting with nuances and colours and sounds and smells when she told it(now I think she could have been a writer).”
母は、私にすてきな物語をたくさん聞かせてくれた。彼女が語ると、どんな些細な出来事であれ、そのニュアンス、色、音、匂い、すべてが、いきいきと立ちあらわれてくるのだった (彼女はきっとよい文筆家にもなったと思う)。
マーリア・ヴィルカラ
ルートはそれぞれの作品に異なる釉薬や文様を施し、一つとして同じ作品を作らなかったため、こちらも唯一のものとなります。
1952
55×18.5×2 (cm)
『ルート・ブリュック 蝶の軌跡』 P103
『Rut Bryk』Espoo Museum of Modern Art P17
在庫1個