Lisa Larson Unique Piece
¥450,000
白土の上に、塔や屋根が重なり合う街のシルエットが描かれています。線刻はやや柔らかく、輪郭にわずかな揺らぎを残す。釉薬は淡い青緑と灰青が溶け合い、光の加減で紫がかすかに浮かぶ。量産版の《Venedig(ヴェネツィア)》が明るい青と金で祝祭的に仕上げられているのに対し、この試作品はより穏やかで抑えた調子をもっています。筆跡や釉の滞留がそのまま残り、焼成中の温度の揺れがわずかな濃淡となって表面を走ります。
裏面は滑らかに処理されているものの、サインや工房印はなく、構造的な厚みも量産品と大きくは変わりません。この点から、本作は造形段階の試作ではなく、釉薬の発色や収縮を確かめるための実験的焼成(釉薬実験段階) に位置するものと考えられます。デザインはすでに完成しており、最終的な色調を決定するために複数の配合や温度を検証していた可能性が高いでしょう。
均整を得る前の段階に焼かれたとみられ、釉薬の反応や層の揺らぎがそのまま表情となっています。量産品では統一されていくこうした偶然の変化が、制作の過程そのものを伝えています。完成品が均質な輝きで工房の意図を明確に示すとすれば、この試作品はその直前にあった探究の瞬間を封じ込めたものです。試作品の段階では、こうした控えめで美しい色調のものが多く見られます。量産品よりも、この穏やかな色調こそがリサ・ラーソンの想い描いたヴェネツィアだったのではないでしょうか。
ヒビや欠けもなく非常に良いコンディションです。
1960’s
28×23(cm)
SKU: 20240517g1/113 カテゴリー: Lisa Larson Prototyp, ALL ITEMS, Lisa Larson, 北欧の陶板 , Gustavsberg, Lisa Larson Unique Piece タグ: art Brand: Gustavsberg
在庫1個
Lisa Larson(1931–2024)
“猫のマイキー”で知られるリサ・ラーソン──けれど世界では、自由な造形で評価されたスウェーデンを代表する陶芸家として語られています。






