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Abstract Forms / 内側から立ち上がるかたち

スコーグの作品は、すべてがどこか抽象的です。鳥や花と分かるものもあれば、模様とも構図ともつかないかたちが現れているものもあります。ここでは、かたちの輪郭が曖昧なままに留められた作品群に焦点を当てています。目にした風景や感覚の記憶。それをそのまま写すのではなく、心の中に残った像としてかたちにしたのではないでしょうか。

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Flora & Fauna / 鳥と花が語るもの

一方で、はっきりとモチーフが読み取れる作品も数多く残されています。鳥や魚、そして花──いずれも実在の姿に根ざしながら、スコーグの手を経ることで、どこか抽象の側へと歩み寄っています。輪郭は簡潔で、装飾の線は抑制され、それでも存在の強さが滲み出てくる。量産はされず、すべてが一点もの。モチーフの解像度を保ちながらも、毎回異なる表情を見せるのは、かたち以上に「気配」を写し取ろうとしたからかもしれません。そこには、物語よりも静かな観察が宿っています。

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五つの静かなかたち

— Five Quiet Forms

量産されることのなかったスコーグの陶芸。その中から五点を選び、紹介します。図案も質感もすべて異なる、それぞれが一度だけ焼かれたかたちです。

光の風景へ / LANDSCAPES OF LIGHT

作家としての晩年、スコーグはそれまでのストイックな、時に怖ささえ感じさせるほどの厳格な作風から一転します。黒と銀を基調とした緊張感のある世界を離れ、スウェーデンの自然を映す、柔らかく光に満ちた風景画の世界へと向かいました。

多くの偉大な芸術家が、キャリアの最後に辿り着くと言われる「子供の純粋さ」。この変化は、まさにスコーグがその境地へ至った証なのかもしれません。

複雑な構成や観念を削ぎ落とし、ただ美しいと感じるままに、明るい色彩と柔らかな筆致で心象風景を描き出す。そこには、混じり気のない純粋な感情だけが、穏やかに表現されています。

一点ごとに異なる表情を持つこれらの作品は、特定の場所の再現というより、作家の記憶に残る「光の断片」。それは見る者それぞれの心の風景とも静かに重なり、ノスタルジックな温かさで私たちを包み込みます。

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この特集によせて

師ヴィルヘルム・コーゲから受け継いだ銀彩技法。ボリエ・スコーグは、その伝統を単なる装飾に留めませんでした。釉薬にキルナ産の鉄鉱石やガラス片を融合させ、銀に立体的な表情を与える。自然の石ころさえも、彼の手に掛かれば唯一無二のアートピースへと姿を変えたのです。

しかし、そのように一点制作という姿勢を貫いたからこそ、彼の名は広く知られる機会を失いました。1987年の引退と共に絵画制作へと移行し、銀彩を用いた陶芸が作られることは二度とありませんでした。残されたのは、その技術的な系譜を継ぐ者もなく、歴史の中に静かに佇む、希少な作品群だけです。

Börje Skohg
スウェーデン、レットヴィークにて没(1923 – 2006)

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