光と物語を宿すフィンランドの自然美

鏡のように澄んだ湖面をわたる柔らかな日差し、長く続く夏の白夜、そして厳冬に訪れる静寂の薄明――ヘルヤ・リウッコ=スンドストロムの作品には、フィンランド特有の光のリズムと深い物語が刻まれています。草木や動物たちのモチーフは、まるで森の言い伝えを想起させる豊かな詩情を宿し、優しさとわずかな哀愁を同時に感じさせるのです。さらにラスター釉の繊細な輝きが加わることで、その自然描写は一層幻想的に彩られ、光の揺らぎと物語が共鳴するような空気を帯びていきます。こうした北欧の自然観と細やかな感受性が融合した彼女の作品は、まさに「光と物語を宿すフィンランドの自然美」を体現し、人々の心に長く留まり続けます。

人の暮らしを彩る芸術をつくる

その思いを胸に、ヘルヤは日常の空間にそっと寄り添う陶板レリーフや大型オブジェを数多く手がけてきました。彼女の作品は、北欧の自然をイメージさせる柔らかな曲線や鮮やかな色彩が特徴で、見る者の心を穏やかに包み込みます。
一見するとシンプルなモチーフに見えるものの、細やかな重ね焼きや偶然性を生かした手法によって、作品それぞれに深みのある表情が生まれるのです。壁に掛けられた陶板からは、森や草原のささやきが聞こえてくるかのような感覚さえ覚え、そこには遊び心とわずかな哀愁が巧みに宿っています。
こうした“日常の中で息づくアート”こそヘルヤの真骨頂。何気ない光の加減や季節の移ろいとともに表情を変え、私たちの暮らしをさりげなく彩り、そっと物語を添えてくれる――そんな芸術をつくり上げているのです。

1938年、フィンランド南西部の緑豊かなヴェフマーで生を受けたヘルヤ・リウッコ=スンドストロムは、幼い頃から絵や粘土に親しみ、森や草原に暮らす動植物へ抱く尽きない好奇心を創作の糧としていました。小さな花や野生の動物たちをじっと観察しながら手を動かすうち、自然の息づかいや微かな色彩の変化をとらえる感性が育まれていったのです。

この幼少期に培われた自然へのまなざしと創作意欲が、後に独特の陶芸表現を生み出す礎となりました。

20世紀北欧デザインを代表する存在

ヘルヤ・リウッコ=スンドストロムは、捨てられるはずだった粘土を活かし、焼成の過程で生まれる歪みや色のにじみすら作品の魅力として取り込むことで、独特の陶芸表現を確立しました。アラビア社の美術部門では、一度の焼成で絵柄を定着させるセラミック版画技法を開発し、量産と芸術性の両立を成し遂げます。やがて、より自由な制作を求め2005年にハメ県フンッピラに「Ateljé Heljä」を開設し、釉薬の微妙な化学反応や偶発的な造形を取り入れながら、多様な作品づくりに精力的に打ち込みました。ガラス張りのギャラリーを一般公開し、地域のコミュニティとも積極的に交流する一方、早朝から作業に没頭するストイックな姿勢を晩年まで貫き、決して創作への情熱を失うことはありませんでした。彼女が生み出した陶板は、家庭や公共の空間を彩りながら、北欧の自然と日常に穏やかな物語をもたらし、多くの人々の心に深く刻まれています。

 

【主な受賞歴】
1967年 モントリオール万博 グランプリ(最優秀賞)
1982年 フィンランド国家児童文化賞
1994年 芸術教授(プロフェッサー)の名誉称号
2001年 フィンランド獅子勲章 プロ・フィンランディア・メダル

ご購入やご質問について

購入をご希望の方、あるいは作品に関してご質問がございましたら、下記ボタンよりお気軽にお問い合わせください。作品の多くはヘルヤ本人が大切にアトリエで飾っていたものになります。

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