Åke Holm
¥350,000
本作は、スウェーデン陶芸の巨匠、アーケ・ホルム(Åke Holm)がその芸術的評価を確立した1950年代から60年代にかけて制作した、象徴的な大皿シリーズの一枚です。轆轤(ろくろ)を挽くよりも彫塑的な造形を好んだ彼が、シャモットを混ぜた土の板をドーム状の型にかぶせて成形するタタラ作りの手法を用いています。これにより、完全な円形ではない、手仕事の痕跡を色濃く残す温かくも力強いフォルムが生まれました。
この作品の真髄は、その深く、複雑な表情を持つ釉薬にあります。中心部のマットな質感から縁にかけて、静かな夜の湖を思わせる深い青が土の風合いを感じさせる茶褐色へと溶け合い、繊細な結晶模様が浮かび上がっています。この息をのむような美しさは、計算と偶然の産物です。ホルムは、異なる成分の釉薬を幾重にも筆で重ね塗りすることで、生き生きとした色合いを生み出しました。
とりわけこの豊かな表情は、彼が自身の作品の焼成に好んで用いたヘーガネス社のルールファブリーケンにあった、巨大な石炭窯の恩恵によるものです。窯の中で炎が直接作品に触れる場所を選ぶことで、釉薬は予測不能な化学変化を起こし、二つとして同じものはない、生命感あふれる景色を器の表面に描き出したのです。後年、この工場が閉鎖され電気窯での制作を余儀なくされた際には、これほど変化に富んだ釉薬の再現は叶いませんでした。
聖書の物語を主題とした作品で知られるホルムですが、本作のように具体的なモチーフを描かない作品においては、土と炎、そして釉薬そのものが主題となります。一枚の皿の上で繰り広げられる静かで壮大な自然現象は、素材を知り尽くした「粘土の魔術師」 であった彼の詩情と、常に新たな表現を追い求めた探求心の結晶といえるでしょう。
ヒビや欠けもなく良好なコンディションです。
38.5×34 h5 (cm)
オーケ・ホルムの作品を年代順に把握することはかなり難しいです。
彼の作品は日付けがつけられておらず、彼自身も制作年代について具体的なことを語るのを避けるためです。
シリーズごとにおおよその年代は分かりますが、後年に過去の手法を用いて作ることもあるため、特定は困難です。
1940-50s
SKU: 20250128a2 カテゴリー: ALL ITEMS, スタジオピース, Åke Holm, Åke Holm Unique Piece タグ: art
在庫1個
Åke Holm (1900-1980)
スウェーデンの陶芸家で彫刻家。彼はHöganäsbolagetでの職を経て、自身の工房を1928年に開設しました。当初は不況を切り抜けるために土産物を作っていましたが、次第に芸術的な聖書の人物像や磁器の動物フィギュアを制作し始めました。彼の作品は1950年代から60年代にかけて聖書のモチーフが主流となり、そのスタイルは抽象的で洗練されたものに進化しました。世界的な名声は高まっていきましたが、彼は故郷Höganäsに留まることを選び、その作品の多くは地元Höganäs museumに寄贈されました。
【自身の工房で一人で作り続けた作品は全て一点物となっています】