Åke Holm
¥180,000
本作は、20世紀スウェーデン陶芸の巨匠、オーケ・ホルム(1900–1980)が、その芸術的評価を確立した1940年代から60年代にかけて制作した、大型の炻器大皿シリーズの一点です 。彼の創作活動の中心であった故郷ホガナスの工房で、その類稀な物語性と造形感覚が余すところなく発揮されています 。
ホルムは轆耤(ろくろ)を多用せず、粘土を板状に伸ばすタタラ作りと、ドーム状の石膏型を用いる独自の手法でこの大皿を成形しました 。そのため、作品は完全な円ではなく、手仕事の温かみが感じられる、わずかに歪んだ有機的なフォルムを持っています 。素材には、焼成済みの陶片を砕いて混ぜ込んだシャモット入りの粘土が使われており、表面には素朴で力強い質感が生まれています 。
この作品の最大の魅力は、その表現力豊かな絵付けにあります。暗い鉄釉を下地とし、その上に象牙色の白釉で、二人の人物が大きな魚を棒で担ぐ姿が大胆な筆致で描かれています 。人物の衣服や魚の模様に差し色として用いられたコバルトブルーが、静謐な画面に深いアクセントを与えています 。
描かれたモチーフは、旧約聖書に登場する「カナンンの地を偵察する者たち」が、一本の棒に巨大なぶどうの房を担いで運ぶ場面を彷彿とさせます 。しかし、本作で担がれているのはぶどうではなく魚であり、これはホルムが生涯を通じて繰り返し主題としたもう一つの重要なモチーフ、「漁師ペテロ」に代表される漁労のテーマと融合していると読み解くことができます 。聖書の壮大な物語の構図を借りながら、故郷の地に根差した人々の営みを描き出すことで、ホルム独自の静かで力強い物語世界がこの一枚の皿の上に創造されています。
単なる装飾皿ではなく、彼の彫刻作品と同様に深い精神性を宿した「描かれた彫刻」とも呼ぶべき、オーケ・ホルムの芸術性が凝縮された逸品です。
ヒビや欠けもなく良好なコンディションです。
27.5×28 h5 (cm)
1950s
オーケ・ホルムの作品を年代順に把握することはかなり難しいです。
彼の作品は日付けがつけられておらず、彼自身も制作年代について具体的なことを語るのを避けるためです。
シリーズごとにおおよその年代は分かりますが、後年に過去の手法を用いて作ることもあるため、特定は困難です。
SKU: 20250128a3 カテゴリー: ALL ITEMS, スタジオピース, Åke Holm, Åke Holm Fat タグ: art
在庫1個
Åke Holm (1900-1980)
スウェーデンの陶芸家で彫刻家。彼はHöganäsbolagetでの職を経て、自身の工房を1928年に開設しました。当初は不況を切り抜けるために土産物を作っていましたが、次第に芸術的な聖書の人物像や磁器の動物フィギュアを制作し始めました。彼の作品は1950年代から60年代にかけて聖書のモチーフが主流となり、そのスタイルは抽象的で洗練されたものに進化しました。世界的な名声は高まっていきましたが、彼は故郷Höganäsに留まることを選び、その作品の多くは地元Höganäs museumに寄贈されました。