Åke Holm Vase
¥180,000
Åke Holm(オーケ・ホルム)のキャリア初期、1930年代から40年代にかけて制作されたと考えられる貴重な水差しです。底面に見られる「Å. Holm」という署名は、彼がこの時期に多用していた特徴的なサインの一つとして知られています。
球根のように丸みを帯びた胴体から細い首が伸び、優雅な取っ手が添えられた古典的なフォルムは、彼が芸術家として独立した初期のスタイルを色濃く反映しています。1928年、オーケはHöganäsbolaget(ヘーガネス社)の美術陶器部門の閉鎖を機に、弟のErnst “Atte” Holm(エルンスト “アッテ” ホルム)と共に「Bröderna Holms Konstkeramik(ホルム兄弟の美術陶磁器工房)」を設立しました 。当時の工房では、ろくろの名手であった弟のアッテがこうした水差しや壺といった日用品の成形を担当し、オーケは主に装飾と施釉を手がけていたと記録されています。この水差しもまた、そうした兄弟の共同作業の中で、オーケがその装飾の才能を発揮した一点と考えられます。
作品の表面を覆うのは、深みのあるオリーブグリーンがかった茶系の釉薬です。単色ではなく、濃淡や斑(まだら)が複雑に混ざり合い、落ち着いた中にも豊かな表情を生み出しています。これは、オーケがヘーガネス社のシェールファブリーケン(Kärlfabriken)での12年間の勤務経験で培った、粘土と釉薬に関する深い知識の表れです 。彼は独立後、自宅工房に築いた石炭窯で実験を重ね、独自の釉薬表現を探求しました。
胴体にあしらわれたリズミカルなループ状の装飾は、本作の大きな特徴です。彼が後に展開する、聖書を主題とした重厚な彫刻群とは異なる、軽やかで装飾的な側面を際立たせています。この流麗な模様には、彼が青年期に師事したAlbin Hamberg(アルビン・ハンベルク)や 、ヘーガネス社時代のデザイナーであったEdgar Böckman(エドガー・ベックマン)から受けた、ユーゲントシュティール(アール・ヌーヴォー)様式の影響も見て取れます 。
本作は、オーケ・ホルムが「孤高の彫刻家」としてモニュメンタルな作品世界を確立する以前の、実用品としての器に芸術的な装飾を施していた初期の試みを示す重要な作例です。彼が終生持ち続けた「正しいオブジェの正しい場所に、正しい釉薬を施す」という信念が 、この一点にも確かに息づいています。
ヒビや欠けもなく良いコンディションです。
h26.5 (cm)
1930-40s
オーケ・ホルムの作品を年代順に把握することはかなり難しいです。
彼の作品は日付けがつけられておらず、彼自身も制作年代について具体的なことを語るのを避けるためです。
シリーズごとにおおよその年代は分かりますが、後年に過去の手法を用いて作ることもあるため、特定は困難です。
在庫1個
Åke Holm (1900-1980)
スウェーデンの陶芸家で彫刻家。彼はHöganäsbolagetでの職を経て、自身の工房を1928年に開設しました。当初は不況を切り抜けるために土産物を作っていましたが、次第に芸術的な聖書の人物像や磁器の動物フィギュアを制作し始めました。彼の作品は1950年代から60年代にかけて聖書のモチーフが主流となり、そのスタイルは抽象的で洗練されたものに進化しました。世界的な名声は高まっていきましたが、彼は故郷Höganäsに留まることを選び、その作品の多くは地元Höganäs museumに寄贈されました。







