Åke Holm Bowl 17cm
¥120,000
Åke Holm(オーケ・ホルム)がキャリア初期に手掛けたと考えられる、小ぶりながらも深い表現力を持つ鉢(Skål)です。
高台(こうだい)の内側に刻まれた「Å. Holm」という署名は、彼が独立して間もない1930年代から1940年代にかけて多用していた特徴的なサインの一つです。この時期、オーケは聖書を主題とした彫刻作品と並行し、工房経営の基盤として実用的な器も制作していました。
本作は端正なろくろ成形によるものですが、オーケ自身はキャリアの出発点ではろくろを挽けず、独立後に弟のErnst “Atte” Holm(エルンスト “アッテ” ホルム)からその技術を学んだとされています。彼が後年、彫刻的な大作だけでなく、こうした「葉のように薄い鉢」の制作にも意欲を燃やしていたことが記録に残っています。
この鉢の最大の魅力は、その独特の釉薬表現にあります。内側はシンプルなベージュ系の釉薬で仕上げられているのに対し、外側はクリーム色を基調とした地に、コバルトブルーと茶系の釉薬が縦に流れるように、あるいは滲むように施されています。これは、オーケがHöganäs(ヘーガネス)社のシェールファブリーケン(Kärlfabriken)で培った釉薬に関する深い知識の表れです。彼は釉薬を筆で塗り、異なる成分の釉薬を何層にも重ねることを好み、窯の中の炎と化学反応によって生まれる偶発的な色の変化を計算していました。
本作に見られる装飾的な釉薬の試みは、彼が後年に確立する、鋳鉄(じょうてつ)を思わせる重厚なマット黒釉の彫刻群とは異なる、キャリア初期の表現の模索を示しています。オーケ・ホルムが終生持ち続けた「正しいオブジェの正しい場所に、正しい釉薬を施す」という信念 が、この小さな古典的なフォルムの鉢の上で、色彩豊かな釉薬の実験として結実した貴重な一点です。
ヒビや欠けもなく良いコンディションです。
φ17 h8.5 (cm)
1930-40s
オーケ・ホルムの作品を年代順に把握することはかなり難しいです。
彼の作品は日付けがつけられておらず、彼自身も制作年代について具体的なことを語るのを避けるためです。
シリーズごとにおおよその年代は分かりますが、後年に過去の手法を用いて作ることもあるため、特定は困難です。
在庫1個
Åke Holm (1900-1980)
スウェーデンの陶芸家で彫刻家。彼はHöganäsbolagetでの職を経て、自身の工房を1928年に開設しました。当初は不況を切り抜けるために土産物を作っていましたが、次第に芸術的な聖書の人物像や磁器の動物フィギュアを制作し始めました。彼の作品は1950年代から60年代にかけて聖書のモチーフが主流となり、そのスタイルは抽象的で洗練されたものに進化しました。世界的な名声は高まっていきましたが、彼は故郷Höganäsに留まることを選び、その作品の多くは地元Höganäs museumに寄贈されました。




