Åke Holm “ABRAHAM,ISAK OCH VADUREN”
¥150,000
Åke Holm(オーケ・ホルム)が、その創作活動の根幹をなす旧約聖書の物語を主題として制作した、重厚な壁掛けの陶製レリーフです。ホルムにとって聖書の物語は、人間の信仰、試練、そして救済といった普遍的なテーマを探求するための尽きることのないインスピレーションの源泉でした。
このレリーフが描いているのは、創世記に記された「アブラハムの燔祭」の場面です。神への信仰を試され、我が子イサクを捧げるよう命じられたアブラハムが、まさにその行いに及ぼうとした瞬間、神の御使いがそれを止め、身代わりとして茂みに角を絡ませた雄羊(おうし)を遣わしたという、旧約聖書の中でも特に劇的な物語です。画面向かって左に立つ、手に鋭利な刃物を持つ背の高い人物がアブラハム、その隣に立つ小柄な人物が息子イサクです。そして、二人の中央には、茂みを象徴する木の前で、神が備えられた雄羊の姿が捉えられています。ホルムは、この緊迫した場面を、登場人物の感情的な機微よりも、物語の本質を伝える象徴的な構図で表現しています。人物像は彼の作品に共通する、素朴で力強く、様式化されたフォルムで造形されています。
ホルムにとってレリーフは、彫刻と素描の両方への関心を自身の陶芸制作の中で結びつけるための重要な表現でした 。提供された資料によれば、彼は気に入ったモチーフが完成すると、石膏型を制作しました 。そして、その型に粘土を押し込むことで、同じ構図の作品を複数制作することが可能になりました 。この技法により、彼は優れた芸術作品を、当時の絵画に代わる比較的手頃な選択肢として人々に提供することができたのです。本作も、そうした石膏型を用いて制作された可能性が高い一点です。
素材には、彼が得意としたシャモット(chamotte)を混ぜ込んだ炻器(stengods)が用いられ、土の粗い質感が作品に原始的な力強さを与えています。施された釉薬(glasyrer)は、茶褐色を基調とした落ち着いたアースカラーでまとめられており、聖書の主題が持つ厳粛な雰囲気を際立たせています。レリーフの凹凸によって釉薬に濃淡が生まれ、単色ながらも豊かな表情を見せている点は、ホルムの卓越した技術の表れです。
彫刻家であり、優れた語り部でもあったホルムの芸術的本質が凝縮されたこの作品は、壁面に飾ることで、静かながらも深い精神性を空間にもたらします。信仰の試練とその救済という、時代を超えて人の心を打つ物語を、故郷Höganäs(ヘーガネス)の土を用いて表現した、思索的な逸品です。
ヒビや欠けもなく良好なコンディションです。
W33×27 (cm)
オーケ・ホルムの作品を年代順に把握することはかなり難しいです。
彼の作品は日付けがつけられておらず、彼自身も制作年代について具体的なことを語るのを避けるためです。
シリーズごとにおおよその年代は分かりますが、後年に過去の手法を用いて作ることもあるため、特定は困難です。
在庫1個
Åke Holm (1900-1980)
スウェーデンの陶芸家で彫刻家。彼はHöganäsbolagetでの職を経て、自身の工房を1928年に開設しました。当初は不況を切り抜けるために土産物を作っていましたが、次第に芸術的な聖書の人物像や磁器の動物フィギュアを制作し始めました。彼の作品は1950年代から60年代にかけて聖書のモチーフが主流となり、そのスタイルは抽象的で洗練されたものに進化しました。世界的な名声は高まっていきましたが、彼は故郷Höganäsに留まることを選び、その作品の多くは地元Höganäs museumに寄贈されました。