Åke Holm “DANIEL I LEJONGROPEN”
¥150,000
Åke Holm(オーケ・ホルム)が、その創作活動で繰り返し取り上げた旧約聖書を主題とする、力強い壁掛けの陶製レリーフです 。ホルムの作品群において、聖書の物語は単なる宗教的な場面描写に留まらず、人間の信仰や試練といった普遍的なテーマを探求するための重要な媒体でした 。
この作品が描いているのは、旧約聖書のダニエル書に記された「獅子の洞窟のダニエル」の物語です。王の禁令に背いて神への祈りを続けたことで、獅子の洞窟に投げ込まれた預言者ダニエルが、その揺るぎない信仰によって神に守られ、一夜を無傷で過ごしたという奇跡の場面です。画面中央には、神への信仰によって守られ、獅子たちの中で静かに佇む預言者ダニエルの姿が描かれています 。彼を囲む獅子たちは獰猛な捕食者としてではなく、まるで彼の権威に従うかのように穏やかな表情で表現されています 。ホルムは、劇的な場面を感情的な描写に頼るのではなく、登場人物の象徴的な配置と、素朴で力強いフォルムによって物語の本質を伝えています。
ホルムは気に入ったモチーフが完成すると、石膏型を制作しました。そして、その型に粘土を押し込むことで、同じ構図の作品を複数制作することが可能になりました。この技法により、彼は優れた芸術作品を、当時の絵画に代わる比較的手頃な選択肢として人々に提供することができたのです。本作も、そうした石膏型を用いて制作された可能性が高い一点です。素材には、彼の作品に特徴的な粗い質感を生み出すシャモット(chamotte)を混ぜ込んだ炻器(stengods)が用いられています。施された釉薬(glasyrer)は、背景の深いコバルトブルーと、人物や獅子に使われた茶褐色の鉄釉が美しい対比をなし、作品に重厚さと奥行きを与えています。レリーフの凹凸によって釉薬に濃淡が生まれ、単色ながらも豊かな表情を見せている点は、ホルムの卓越した技術の表れです。
彫刻家であり、優れた語り部でもあったホルムの芸術性が凝縮された本作は、壁面に飾ることで、信仰の力という時代を超えたテーマを静かに空間に語りかけます。故郷Höganäs(ヘーガネス)の土から生まれた、思索的な逸品です 。
ヒビや欠けもなく良好なコンディションです。
W33×27 (cm)
オーケ・ホルムの作品を年代順に把握することはかなり難しいです。
彼の作品は日付けがつけられておらず、彼自身も制作年代について具体的なことを語るのを避けるためです。
シリーズごとにおおよその年代は分かりますが、後年に過去の手法を用いて作ることもあるため、特定は困難です。
在庫1個
Åke Holm (1900-1980)
スウェーデンの陶芸家で彫刻家。彼はHöganäsbolagetでの職を経て、自身の工房を1928年に開設しました。当初は不況を切り抜けるために土産物を作っていましたが、次第に芸術的な聖書の人物像や磁器の動物フィギュアを制作し始めました。彼の作品は1950年代から60年代にかけて聖書のモチーフが主流となり、そのスタイルは抽象的で洗練されたものに進化しました。世界的な名声は高まっていきましたが、彼は故郷Höganäsに留まることを選び、その作品の多くは地元Höganäs museumに寄贈されました。