Inger Persson
¥110,000
深く沈むような黒の中から、青が静かに浮かび上がる。Inger Perssonが繰り返し選んできた青は、この作品でもかたちの輪郭を際立たせ、器全体に落ち着いた明度の緊張を与えています。
胴部に広がる青釉は、粗い素地の上でわずかに凹凸を残しながら光を受けとめます。その表面に繰り返される太い黒の線──手描きの筆致は一定のリズムを持ちながらも、わずかな揺らぎを残しています。それは、模様でありながら一つの作品のような存在感。けれどPerssonはそれを前面には押し出さず、全体の構成の中に自然に組み込んでいます。その抑制と調和の感覚に、彼女の成熟が見てとれます。
首から上の黒釉はやや厚く、青との境界には滲みや段差が残されています。偶然を排しきらず、それでも構造の中に取り込む──この造形の進め方こそ、彼女が「構成としての色彩」と語った言葉を体現しています。
線と色、光沢と素地。いずれも主張しすぎることなく、器の中で役割を果たしています。Perssonが生涯をかけて探った「実用と造形の交点」が、この小さな花器の中にも、確かに息づいています。
ヒビや欠けもなく良好なコンディションです。
φ10.5 H23 (cm)
在庫1個
Inger Persson(1936-2021)
温かなユーモアと巧みなろくろ技術を兼ね備えたスウェーデンの陶芸家です。フクロウや鳥などを抽象的に表現し、深い青を軸とする鮮やかな釉薬使いで知られます。粗めのシャモット土や手彫り模様を生かし、伝統に遊び心を加えた作品は国内外で高く評価されました。動物造形のユーモラスな魅力と色彩の豊かさが、多くの人々を引きつけ続けています。