Rut Bryk “Tonssi”
¥2,300,000
Rut Bryk(ルート・ブリュック)の前期の陶板作品である “Tonssi=ダンス” です。
「鋳込み成型(スリップ・キャスティング)」という新しい技法を用いた陶板作品で世界的な名声を得る中、1954年にルートは第二子マーリアを出産します。自らが経験し感じたことをインスピレーションの源とするルートが、この時期に「母と子」をテーマとした作品を数多く制作したのは自然なことと言えるでしょう。子どもと遊ぶ母親、その作品を “Tonssi=ダンス” と名付け制作したルートは、幼いころに自らが思い描いた幸せな家族像の中にいたのではないでしょうか。この作品が今の幸せな自分と子、それともかつての自分と母を描いたのか。作品の意味について語ることを嫌い、作品には仲介や解釈抜きに直に語って欲しいと願っていたルート。こちらも鑑賞者によって感じ方が変わる作品であり、それがより魅力を増している作品です。
“I loved when she told about her child food.Exciting,funny,colourful stories. Rut always told that her childhood was very happy.Now when I know better I see that it was not so happy as she told.”
私は、母が自らの幼い頃の話をするのが好きだった。おもしろくてわくわくするような、色とりどりのお話ばかりだったから。ルートはいつも、自分がどれほど幸せな子ども時代を過ごしたかを話した。でも今はわかる。実際には、彼女が語るほど幸福ではなかったことを。
マーリア・ヴィルカラ
ルートはそれぞれの作品に異なる釉薬や文様を施し、一つとして同じ作品を作らなかったため、こちらも唯一のものとなります。
細かなダメージのあるものが多い陶板ですが、こちらは希少な完品です。ダメージが作品の評価、価格に大きく反映されますので、コレクターの方におススメしたいコンディションの逸品です。
1957
22.5×21×1.5 (cm)
『ルート・ブリュック 蝶の軌跡』 P125
『Rut Bryk』Espoo Museum of Modern Art P152
『Rut Bryk』DESUGNMUSEO P89
在庫1個
Rut Bryk(1916-1999)
ヘルシンキの中央芸術工芸学校で学んだ後、1940年代初頭からアラビア社アート部門で活動を始めました。版画の技法を応用した型の研究と釉薬による独自表現を確立し、1951年のミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞。国際的な注目を浴び、フィンランドを代表する陶芸作家のひとりとして知られるようになります。初期の具象的な陶板から、1960年代には無数のタイルを組み合わせた抽象的・立体的なモザイクへと移行。ヘルシンキ市庁舎やフィンランド銀行、大統領私邸に設置された大作は、迫力あるスケールと色彩表現で高い評価を得ました。版画の鋭い構成力や釉薬の奥行きを活かす作風は、北欧デザインに新風を吹き込み、陶芸の可能性を広げる礎となっています。