哲学のための創造

CREATION FOR PHILOSOPHY

国王でさえ購入を拒まれたという逸話は、彼の芸術が市場ではなく、自身の内なる対話のために存在したことを示しています。心に適った作品は窯に錠をかけ、買い手の目から隠し、その哲学を守り抜いたのです 。

HÖGANÄS,

SINCE  1928

聖域/SANCTUARY

オーケ・ホルム(Åke Holm)が、時に国王からの購入依頼さえ断ったという逸話は、彼の芸術家としての姿勢を何よりも雄弁に物語ります。それは、創作という神聖な時間を誰にも邪魔されたくないという、純粋で烈しい情熱の表れでした。制作の邪魔をされないように、工房の扉に「Stängt för i år(今年は閉店しました)」という札を掛けることは、日常茶飯事だったと伝えられています。

Höganäs(ヘーガネス)のSandflygsgatan(サンドフリグスガータン)にあった彼の工房は、単なる仕事場ではなく、一種の聖域でした。窯から出したばかりの作品の中でも、特に心に適ったものは誰にも見せず、時には窯に鎖と南京錠をかけてまで、性急な買い手から守ったといいます 。彼にとって作品は、完成した瞬間から商品になるのではなく、まずは自身がじっくりと対話し、その存在を確かめるべきものだったのです。

「良き陶芸家になるには、多くの人生を要する」と語ったとされるホルム 。その孤高の姿勢の裏には、ユーモアと音楽を愛する人間的な温かさも共存していました 。彼の作品に触れることは、この妥協なき芸術家の魂が、土という永遠の素材と交わした静かで濃密な対話の軌跡を辿ることなのです。

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紙の上のフォルム

FORMS ON PAPER

版画コレクション

全275点の軌跡

GRAPHIC ⸻ WORKS
GRAPHIC ⸻ WORKS
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土の奥の物語

オーケ・ホルムの作品を読み解く鍵は、土の奥に息づく彼自身の物語にあります。

ヘーガネスの巨匠

Åke Holm

オーケ・ホルムは、20世紀スウェーデン陶芸を象徴する孤高の作家です。故郷ヘーガネスの土に生涯を捧げ、半世紀にわたり独立工房で制作を続けました。彼は聖書の物語を素焼きの粘土で表現し、動物像や陶板にも人間の内面を映し出しました。その造形は宗教を超えて、普遍的な感情と存在の静けさを探るものです。ストックホルム国立美術館にも作品が収蔵され、陶芸史家トシュテン・アールストランドは彼を「今日のスウェーデン陶芸で最も重要な人物の一人」と評しています。ロイヤル・コペンハーゲンからの誘いを断り、国王への売却も拒んだという逸話は、名誉よりも芸術の純粋さを選んだ彼の精神を物語ります。その生涯の作品は、いまヘーガネス博物館の中核コレクションとして受け継がれています。