Sylvia Leuchovius 《陶板作品》(1950年代・初期作)
── 荒削りながらも造形への意志がはっきりと現れた初期の一作。輪郭線の強さと、色面の素朴な組み合わせが、後年とは異なる緊張感を湛えています。
1. 焼成による色と表面の変化
白地の素地には細かな貫入が広がり、焼成による表面の変化が全体に静かな表情を加えています。背景にはごく淡いピンクと青みが差し、鳥の輪郭を自然に引き立てる構成です。
2. 線と色による簡潔な構成
翼に用いられた黒釉は、ややざらつきを残した質感で、画面の中でも強いアクセントとなっています。色面は単純でありながら、明快な配置によってかたちの印象がはっきりと伝わります。
3. 初期ならではの技法的特徴
この作品は、後年のレリーフ装飾や点描技法とは異なり、線描と平面的な塗り分けによって構成されています。筆運びの揃いすぎない部分や釉薬の溜まりが、手仕事ならではの揺らぎを見せています。
4. 素材との関係が際立つ構造
レウショヴィウスの作品に共通するのは、素材との対話から生まれる構成力ですが、この時期はまだ装飾性よりも手の動きに導かれた直線や塗り分けが中心です。粘土のもつ反発や重さと向き合いながら、一点一点に試行錯誤の跡が残されており、完成度よりも過程に重きが置かれていたことがうかがえます。
5. 作家初期の制作背景
1950年代の最初期に制作された本作には、技法の洗練よりも、造形そのものへの関心が強く表れています。素材と向き合いながら、かたちの基礎を探っていた時期の姿勢が、そのまま表面にあらわれています。
6. モチーフと構成の関係性
鳥というテーマはレウショヴィウスの代表的なモチーフですが、本作では物語性よりも図案的な簡潔さが際立っています。削ぎ落とされた構成のなかに、初期ならではの率直な魅力が宿っています。
Designer | Sylvia Leuchovius |
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サイズ | 12.5×22.5 D1.5 (cm) |
サイン・背面情報 | 手描きサインあり |
Brand |
Sylvia Leuchovius (1915–2003)
土と釉薬を用いて「夢見るような世界」を表現した、スウェーデンを代表する陶芸家です。量産品の潮流とは異なる道を歩み、手仕事による一点制作にこだわり続けました。小さな粘土粒や花弁を貼り重ねる繊細なレリーフ技法と、透明感ある色彩が特徴です。その作品は「土と色彩による詩」と評され、今も静かな人気を集めています。
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