Lisa Larson / 鳥のオブジェ (Unique Piece)
リサ・ラーソンが粘土で紡いだ、ユーモラスで不可思議な生命体。
大胆なデフォルメと色彩豊かな装飾性に、彼女の尽きない好奇心が宿ります。
1. 既成概念からの飛躍
リサ・ラーソンの手から生み出された、既成概念にとらわれない自由な想像力を感じさせる陶製のオブジェです。いわゆる「鳥らしさ」をあえて逸脱し、見る者の固定観念を心地よく裏切るような、大胆なフォルムがまず目を引きます。これは、彼女が持つデザインの多様性、特に定型に収まらない表現への意欲を示す一例と言えるでしょう。芸術的な家庭環境で育ち、早くからアーティストを志した彼女の、自由な精神が表れています。
2. 鳥を超えたフォルムの魅力
鋭角的に突き出す頭部、横に大きく広がる尾のような形状。特定の鳥種を模倣するのではなく、日常の観察から得たインスピレーションをもとに 、対象が持つ本質的なキャラクターや動きのエッセンスを捉え、粘土という素材を通して三次元に立ち上げたような造形です。実際、鳥というよりは別の生き物にも見えるほど、既成概念から大きく振り切った、ユニークなデザインに仕上がっています。生命感はありながらも、その正体は見る者の想像力に委ねられており、この曖昧さも、本作のユニークな魅力となっています。
3. 釉薬と色彩のコンポジション
胴体を覆うのは、白地にグレーやブルーが溶け合うように混ざり合った複雑な釉調です。そこに重ねられた鮮やかなブルーのドット(水玉模様)は、リズミカルなアクセントとなり、視覚的な楽しさを加えています。「柄に柄を組み合わせたカラフルな絵付け」とも表現できるような、異なる要素が組み合わされた独自の装飾的世界観が構築されています。釉薬の流れや色の滲みにも、手仕事ならではの偶発的な美しさが見られます。
4. 手仕事が生む確かな存在感
「粘土こそ自分の素材」と語った作家の言葉を裏付けるように 、高さ15cmと小ぶりながら、素材への深い理解と愛情が感じられる、しっかりとした存在感を放っています。表面の滑らかな釉薬部分と、台座のざらりとした素焼きに近い部分との質感の対比も、陶芸メディアの可能性を探る試みとして興味深い点です。そして底面には、作家本人による手描きのサインが記され、このオブジェが直接作家の手から生まれたことを示しています。
5. リサ・ラーソンという作家性
この大胆なデフォルメ、色彩やパターンの自由な組み合わせは、リサ・ラーソンの作品にしばしば見られる遊び心や、既成の美しさにとらわれない姿勢と通底しています。「年を取っている暇なんてない」と語ったその創作エネルギー は、グスタフスベリ工房での量産品開発と自身の自由な作品制作の両立 という形でも発揮されました。本作のような一点物のオブジェには、特に後者の、アーティストとしての実験精神や探求心が色濃く表れていると言えます。
6. このオブジェが放つ特別な魅力
生命のユーモアと抽象的なフォルム、そしてカラフルな装飾性が一体となったこのオブジェは、リサ・ラーソンの多面的な才能の中でも、特に自由な実験精神を伝える希少な一例です。固定的な意味から解き放たれたその姿は、見る角度や光によって新たな表情を見せ、飽きさせません。量産されたシリーズ作品とは異なる、一点物ならではの強い個性と、彼女の尽きない好奇心 の結晶として、永く愛でるにふさわしい存在感を放っています。
コンディション | Excellent |
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サイン・背面情報 | 手描きサインあり |
サイズ | H15cm |
製作年代 | 1960s–70s |
Lisa Larson (1931-2024)
リサ・ラーソンは、単なるキャラクター造形を超え、彫刻としての完成度と独自の造形言語で評価されるスウェーデンの陶芸家です。動物や子どもをモチーフにしながら、量産とアートの境界に新たな可能性を示しました。その作品は欧米を中心に美術市場でも高く評価され、近年では一点物や初期作を中心に再評価が進んでいます。