Sylvia Leuchovius(シルヴィア・レウショヴィウス)自身の手による世界に一点だけのユニークピースです。彼女の作品の中でも最大級の大型ボウルは、彼女が得意とする鳥、リンゴ、どちらとも見える抽象的な模様が描かれています。他の作家にはない絶妙な美しい色合いに仕上がっている傑作です。
ヒビや欠けもなく非常に良好なコンディションです。
φ35.5 H13 (cm)
Sylvia Leuchovius《Bowl》
── 焼成で描かれたかたち、その選択の意味
1. 揺らぎの中のかたち
上下に突起をもつ輪郭と、中央のくぼみが組み合わさり、果実や鳥の姿を連想させる。どちらとも定まらない曖昧さが、かたちに柔らかな緊張を与えている。内面を覆う黒釉のひろがりが、深みと静けさを伴って見る者を引き込んでいく。
2. 焼成が生む表情
外側には釉薬の自然な流れや溜まりが生まれ、高温焼成による濃淡の変化が穏やかな表情をつくり出している。ざらつきを残す焼き締まりの外面に対し、内側はつややかな黒釉で包まれ、滑らかな手ざわりがある。視線と触覚のどちらにおいても、静かな対比が感じられるつくりになっている。
3. 造形の余白
直径35cmを超える大きさでありながら、使うための器という枠をあえて離れている。盛る・注ぐといった用途の気配は希薄で、ただその形と存在だけが静かに据えられている。道具ではなく、かたちそのものと向き合うことを促してくるような作品である。
4. 見る距離による変化
遠くからは沈黙するように見えるが、近づくと釉の揺らぎやかたちの陰影が少しずつ立ち上がってくる。強く主張するわけではないが、視線を引き寄せる確かな重みがあり、時間をかけて向き合うことでようやく輪郭がにじみ出てくるような、不思議な引力を湛えている。
Designer | Sylvia Leuchovius |
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Sylvia Leuchovius (1915–2003)
土と釉薬を用いて「夢見るような世界」を表現した、スウェーデンを代表する陶芸家です。量産品の潮流とは異なる道を歩み、手仕事による一点制作にこだわり続けました。小さな粘土粒や花弁を貼り重ねる繊細なレリーフ技法と、透明感ある色彩が特徴です。その作品は「土と色彩による詩」と評され、今も静かな人気を集めています。
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