Sylvia Leuchovius《陶板作品》(1960年代)
── 浮かぶ粒と葉が織りなす、静けさに包まれた詩的な一場面。絵付けではなく、形そのもので語るレウショヴィウスの本領が現れた一点。
1. 種子のような粒 ─ 構成の重心
中央の丸いモチーフには、粘土の粒が整然と並び、まるで種子が土の中で育つ様子を思わせます。緻密に手作業で施されたこの立体感は、絵の具では再現できない陶芸ならではの美しさを伝えています。
2. 葉が囲む、静けさの輪郭
周囲には、優雅に広がる葉のレリーフが控えめに配置され、静かな動きを感じさせます。釉薬の深い色調と相まって、葉脈の一筋一筋が丁寧に表現され、手仕事の温もりが全体に浸透しています。
3. 焼成の痕跡 ─ 静かにざらつく肌理
釉薬の光沢を抑えた焼き上がりには、ざらりとした手触りが残ります。焼成によってややマットに仕上がった表面は、光を柔らかく受け止め、しっとりとした陰影をもたらします。その素朴な肌理にこそ、作家の素材観と抒情性が滲んでいます。
4. 小さな白点 ─ 余白の装飾性
黒に近い地の中に点在する白い粒状の装飾は、静けさの中に軽やかなリズムを加えています。あくまで主題に寄り添う存在ながら、画面全体の緊張感を和らげる、レウショヴィウスらしい遊び心も感じられます。
5. 造形の節度と感性の細やかさ
レウショヴィウスの作品は、しばしば「静かな抒情」と形容されるように、力強さではなく、どこか控えめで、内省的な美しさを感じさせます。作品全体から漂うのは、余計なものをそぎ落としたシンプルさと、細やかな感受性です。
6. 陶芸に宿る自然との共鳴
この作品は、レウショヴィウスの作陶技術とともに、彼女が陶芸を通じて表現したいと願った、自然との調和と静謐な美を凝縮しています。1960年代の陶器が持つ洗練された風格と共に、今も高い評価を受けている逸品です。
Designer | Sylvia Leuchovius |
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コンディション | Excellent |
サイン・背面情報 | 手描きサインあり |
製作年代 | 1964 |
サイズ | W 27.5×27.5(cm) |
Sylvia Leuchovius (1915–2003)
土と釉薬を用いて「夢見るような世界」を表現した、スウェーデンを代表する陶芸家です。量産品の潮流とは異なる道を歩み、手仕事による一点制作にこだわり続けました。小さな粘土粒や花弁を貼り重ねる繊細なレリーフ技法と、透明感ある色彩が特徴です。その作品は「土と色彩による詩」と評され、今も静かな人気を集めています。
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