Sylvia Leuchovius《陶板作品》(1960年代)
── 人気の鳥モチーフが全面に描かれた、シルヴィア・レウショヴィウスによる陶製時計。試作段階の一点もので、量産品にはない質感と色の深みが宿ります。
1. 静かな群像の浮上
細かな粒のモチーフが面を埋め、そのあいだに鳥たちの姿がそっと浮かびます。白と灰の釉薬がわずかににじみ合い、画面に静かな呼吸のような揺らぎを生んでいます。
2. 試作ゆえの色の冒険
量産品に先立つこの一点では、釉薬の厚みや流れが随所に試されています。とくに鳥のまわりに生まれる淡いにじみは、筆や型では描けない、焼き物ならではの自然な輪郭を形づくっています。
3. 触感が語る陰影
表面にはわずかにざらつきが残され、マットな釉調との対比が奥行きをもたらしています。釉薬のかかり具合が微妙に異なることで、光の当たり方によって陰影が生まれ、静けさのなかに微細な変化を感じさせます。
4. 手の記憶をとどめる造形
レリーフの凹凸には、レウショヴィウス独自の手技が見られます。押し型や刻みではなく、小さな粘土片を一つずつ貼り重ねたような印象で、造形に時間と気配が封じ込められているようです。
5. 量産直前の静かな選択
この作品がつくられた1950年代は、モダニズムが主流となる中で、彼女が装飾性を保ちながらも、工芸としての自由さを模索していた時期にあたります。量産の始まる直前の段階だからこそ、個の判断が強く残されています。
6. 時間を包む造形
針の存在すらもひとつの造形として吸い込まれるような、静かな時間の器。時計という機能を超えて、見る者の感覚をふと立ち止まらせる──そんな佇まいが、この一作には宿っています。
Designer | Sylvia Leuchovius |
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サイズ | W37(cm) |
サイン・背面情報 | 手描きサインあり |
製作年代 | 1950s |
コンディション | Excellent |
Sylvia Leuchovius (1915–2003)
土と釉薬を用いて「夢見るような世界」を表現した、スウェーデンを代表する陶芸家です。量産品の潮流とは異なる道を歩み、手仕事による一点制作にこだわり続けました。小さな粘土粒や花弁を貼り重ねる繊細なレリーフ技法と、透明感ある色彩が特徴です。その作品は「土と色彩による詩」と評され、今も静かな人気を集めています。
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