Sylvia Leuchovius 《花器》
── 深みある藍の釉薬に、ひかえめな粒と線描が浮かび上がる静かな造形。実用と装飾のあわいに咲く、端正な一点です
1. 深い藍釉 ─ 静けさと奥行きのある肌合い
筒形のフォルム全体を包むのは、深みのある藍釉。均一ではないその濃淡が、表面にわずかな陰影と揺らぎを与えています。見る角度によって光の反射が変化し、単色でありながら、静かな表情の変化が楽しめる仕上がりです。焼成によって生まれた表面の微かな揺らぎが、手仕事の痕跡として心に残ります。
2. 線と粒 ─ 控えめな装飾が生むリズム
器表面には、光を当てなければ見過ごしてしまうほどの繊細な線描が刻まれています。主張はせず、偶然目に入るような存在感。そのすぐ上、口縁部にはビーズ状の粒が並びます。一定のリズムで添えられたこの装飾は、造形にわずかな動きを加え、全体の均整を崩すことなく軽やかさを添えています。
3. 花器としてのかたち ─ 器と彫刻のあわいに
やや細身の筒形は、植物の量や種類を問わず、静かに受けとめるかたちをしています。すっと立ち上がるラインと、過剰な演出を排した構成は、空間に寄り添うような佇まいをもたらします。器としての用途を持ちながらも、彫刻的な存在感があり、空間に置くだけでも静謐な気配を添える造形です。
4. 作家の視点 ─ 装飾芸術へのまなざし
本作を手がけたシルヴィア・レウショヴィウスは、ロールストランド社において独自の詩情を貫いた作家です。モダニズムの機能性とは距離をとり、植物や器などの身近なかたちに、個人的で柔らかな美を託しました。量産品とは異なるこの一点からも、かたちと装飾を等しく見つめた彼女のまなざしが感じられます。
Designer | Sylvia Leuchovius |
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サイズ | H23.5(cm) |
コンディション | As-is (with damages) |
サイン・背面情報 | 手描きサインあり |
Sylvia Leuchovius (1915–2003)
土と釉薬を用いて「夢見るような世界」を表現した、スウェーデンを代表する陶芸家です。量産品の潮流とは異なる道を歩み、手仕事による一点制作にこだわり続けました。小さな粘土粒や花弁を貼り重ねる繊細なレリーフ技法と、透明感ある色彩が特徴です。その作品は「土と色彩による詩」と評され、今も静かな人気を集めています。
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