Lisa Larson “Drabant” Rare Color

Lisa Larson(リサ・ラーソン)自身の手による世界に一点だけのユニークピース、《DRABANT》の試作品です。

造形はすでに量産品とほぼ同じ精度に達しており、あとは量産版で特徴となるブルーの層を重ねるだけという直前の段階に見えます。表面の処理も整えられ、最終の仕上げに向けて形が固まりつつある印象です。その一方で、この個体に使われている茶色は量産品よりわずかに深く、釉の厚みの差によって微妙に色の沈みが生まれています。その落ち着いた色調が、装飾の線や文様を静かに引き立てており、完成品よりも内側に光をたたえたような、控えめな魅力があります。

まだ未完成の段階にありながら、ここには量産品とは少し異なる、北欧らしい素朴さが漂っています。釉薬の伸びやわずかな濃淡がそのまま表情となり、整いすぎる前の柔らかな余白が作品に残されているようです。完成形へ向かう途中で一度だけ現れる静かな味わいがあり、その揺らぎを含んだ姿が、この段階ならではの良さとして感じられます。

ヒビや欠けもなく良好なコンディションです

1970-73
H 28.5cm