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Francesca Mascitti-Lindh

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白い花穂

Francesca Mascitti-Lindh

白い花穂、1974–76年

陶板、29.5 × 38cm、Arabia
作品ページへ


About

“

偉大な、けれど無名の陶芸家。

ポルヴォーの新聞 Borgåbladet、2021年

フランチェスカ・マシッティ・リンドは、1931年、イタリアの山あいの町で、イタリア人の医師の父と、フィンランド人のテキスタイル作家の母のあいだに生まれました。16歳で母の国フィンランドへ渡り、1955年から34年のあいだ、窯アラビアのアート部門で陶の作品を作りました。

若いころから国の内外で賞を受け、ニューヨークやロンドンの美術館にも作品が収められています。それでも、その名前を知る人は、フィンランドでも多くありません。

二十代で、ニューヨークとミラノ

ヘルシンキの美術工芸の学校で、フランチェスカは、二年あとに入ってきたリカルド・リンドと出会います。1953年、二人は結婚し、ふだん使いの器を作る小さな工房を開きました。形を考えるのも、作るのも、すべて二人です。

1955年、その器が、造船で知られるフィンランドの大企業の社長の目にとまります。社長は、傘下の窯アラビアに、二人をすぐに雇うよう言いました。フランチェスカはそのとき、身ごもっていました。工場に保育園があるのがうれしかった、と振り返っています。

翌1956年、二人の工房の壺が、ニューヨークで30歳以下の陶芸家を対象にしたコンクールの一等になります。二人で作った二段重ねの急須は、ニューヨーク近代美術館に収められました。次の年には、ミラノ・トリエンナーレが、彼女ひとりに名誉賞を贈っています。まだ二十代の半ばでした。

ひびも、植物の一部に

アラビアのアート部門は、大きな工場の中にある、作家が自分の作品を作るための場所でした。フランチェスカはここで、一点物を作り続けます。

その腕がいちばんよく表れているのは、土の扱いです。石のように硬く焼き締まる炻器の土、白い磁器の土、そして焼いた土を砕いて混ぜた、ざらりとしたシャモットの土。火の中でそれぞれ違う動きをする三つの土を、彼女は一つの作品の中で組み合わせました。割れてもおかしくない、とりわけ難しいやり方です。彼女はその性質に逆らわず、生かしました。できたひびや溝は、そのまま草の茎や葉の筋になっていきます。

この土から生まれたのが、壁に掛ける陶の板です。1960年代の終わりから1970年代にかけての、彼女の「花の時代」と呼ばれるころの仕事です。板の上にあるのは、ほとんどが植物。丸い冠をのせた一本の木、アーチの下にひらく花、細い枝の先に並ぶ白い蕾。私たちが集めてきたのは、主にこの時代の壁板です。

近くで見ると、そのことがよく分かります。青緑から黄土へと色の移る地に、細い草の茎がびっしりと立つ一枚。その中央の白い花穂には細かなひびが走り、ひびがそのまま花の筋に見えます。黄土の地に五本の草が立つ一枚では、白い丸い葉の上に、紫と藍の穂がのびています。穂は、乾いた草を土にじかに押し当てて写したもので、細かな毛の一本一本まで残っています。

褐色のざらついた地に、大きな丸い実を刻んだ一枚もあります。実の中には、金色に光る小さな実が、いくつも詰まっています。炻器と金の彩りは、彼女にとって、光と命と愛のしるしだといいます。

42センチ四方

壁板の時代に、評価はさらに広がっていきます。

イタリアの陶器の町ファエンツァの国際陶芸コンクールで、フランチェスカは1970年代に三度、賞を受けました。そのうち二度は、絵画的な作品に贈られる賞です。

1975年には、ストックホルムの国立美術館が、彼女の壁板を一枚買い入れています。炻器にシャモットを混ぜ、線を刻んで色を置いた、42センチ四方の板。手元にある大きな壁板のいくつかと、同じころに作られた、同じ大きさの板です。

のちにロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館も、彼女の壺を収めました。フィンランドでは、国の迎賓の船でもある砕氷船のサロンに作品が飾られ、1981年には国家工芸賞を受けています。ファエンツァの国際陶芸美術館は、いまも彼女を「フィンランドを代表する陶芸家のひとり」と紹介しています。

2001年、アラビアの博物館は、彼女の五十年の仕事をふり返る回顧展を開きました。ヘルシンキの新聞は、その評に、こう見出しをつけています。

1956年、アラビアの工場で急須を手にするフランチェスカ・マシッティ・リンドと、蓋を持つ夫リカルド・リンド。後ろの棚に壺と水差し
1956年2月、アラビアの工場で。急須の胴を持つフランチェスカと、蓋を持つ夫のリカルド。
Photo: Helsingin kaupunginmuseo(CC BY 4.0)
白い花穂の陶板の部分。青緑の地に細い茎が立ち、白い花穂に細かなひびが走る
白い花穂、1974–76年、29.5 × 38cm(部分)。花穂に走る細かなひび。作品ページへ
五本の草の陶板の部分。黄土の地に白い丸い葉と、押し当てて写した紫と藍の穂
五本の草、1970年代、29 × 37cm(部分)。乾いた草を押し当てて写した穂。作品ページへ
金の実の陶板。褐色のざらついた地に、葉のついた大きな丸い実。中に金色の小さな実
金の実、1970年代、41.5 × 41.5cm。作品ページへ
黒い地の花むらの陶板。黒い地に水色の花むらと白い小花
黒い地の花むら、1974–76年、42 × 42.5cm。作品ページへ
“

最も難しい陶を、手なずけた人

Helsingin Sanomat 紙、2001年。回顧展の評の見出し

それでも、無名

冒頭の「偉大な、けれど無名の陶芸家」は、2021年、90歳の誕生日を迎えた彼女を、暮らす町ポルヴォーの新聞が訪ねたときの言葉です。これだけ認められてきた人の名前が、なぜ広く知られていないのでしょう。

日本でも、アラビアの名前は、まず食器で知られています。フィンランドのデザインの黄金時代に名を残した作り手の多くも、どこかの家の食卓にある器で覚えられました。フランチェスカは、34年のあいだ、アート部門で一点物を作った人です。工場でたくさん作られる器は、生涯に数えるほどしか手がけていません。毎日使う器を通して、名前が家の中に届く道が、彼女にはほとんどありませんでした。広く知られなかったのは、たぶんそのためです。

もう一度、光が

流れが変わりはじめたのは、この数年のことです。

2020年、フィンランドの工芸の名品を集めた大きな個人コレクションが、その図録の一巻を四人の作家にあてました。日本でもよく知られるビルゲル・カイピアイネンやオイバ・トイッカと並んで、フランチェスカがその四人に入っています。

このコレクションは2022年から、ヘルシンキの隣の町にあるエスポー近代美術館で、常設展示されています。フィンランドのデザインの歩みをたどるその展示室に、彼女の1960年代と1970年代の陶の作品が並んでいます。壁板を作っていた、あの時代の仕事です。

新聞や雑誌も、あらためて彼女を訪ねるようになりました。95歳になったいま、その生涯と仕事を一冊の本にまとめる計画も持ち上がっています。

作品に、名前がようやく追いつきはじめています。

葉を重ねた木の陶板。縦長の板に、葉を積み上げた一本の木
葉を重ねた木、1969–71年、51 × 23cm。作品ページへ

Awards

  • 2012フィンランド白バラ勲章 一等騎士章Finland
  • 1981フィンランド国家工芸賞Valtion taideteollisuuspalkintoFinland
  • 1977Premio Banca Popolare di Faenza名誉賞第35回 ファエンツァ国際陶芸コンクール、Faenza
  • 1974Premio della Camera di Commercio di Ravenna絵画的な作品に贈られる賞第32回 ファエンツァ国際陶芸コンクール、Faenza
  • 1972Premio della Camera di Commercio di Ravenna絵画的な作品に贈られる賞第30回 ファエンツァ国際陶芸コンクール、Faenza
  • 1957名誉賞彼女ひとりに贈られた賞第11回 ミラノ・トリエンナーレ、Milano
  • 1956一等30歳以下の陶芸家のコンクール。リカルド・リンドとMuseum of Contemporary Crafts、New York

Exhibitions

  • 2026Jubileum95歳の記念の展覧会Kulturhuset Grand、Porvoo
  • 2023個展Kulturhuset Grand、Porvoo
  • 2001Työniloa – Arbetsglädje五十年の回顧展。題は「仕事の喜び」Arabian museo、Helsinki
  • 1972–89Concorso Internazionale della Ceramica d'Arte7回出品。1972・74・77年に受賞Faenza
  • 1971北欧の陶芸展Jönköping
  • 1970フィンランドの美術とデザインの展覧会Mexico
  • 1968個展アラビアの展示ホール、Pohjoisesplanadi 25、Helsinki
  • 1963「都市と芸術」展Bruxelles
  • 1957XI Triennale di MilanoPalazzo dell'Arte、Milano

Museums

  • 2022–Collection Kakkonen寄託と常設展示。1960年代と1970年代の陶の作品EMMA(Espoo Museum of Modern Art)、Espoo
  • 1988壺、1983年ごろ三種の土に草を押し当てたものVictoria and Albert Museum、London
  • 1975壁板と壺、1975年壁板は炻器とシャモット、線刻と彩色、42 × 42cmNationalmuseum、Stockholm
  • 1972–77ファエンツァの受賞作市の所有として美術館に寄託Museo Internazionale delle Ceramiche、Faenza
  • 1958Double Teapot、1956年リカルド・リンドとの合作The Museum of Modern Art、New York

Publications

  • 2020Lasin ja keramiikan mestarit 5: Fantasiaビルゲル・カイピアイネン、ヘレナ・ティネル、オイバ・トイッカとの四人の巻Collection Kakkonen/Parvs
  • 2004Taidekeramiikka Suomessaフィンランドの芸術陶芸の通史Åsa Hellman/Otava、Helsinki
  • 2001Francesca Mascitti Lindh and the ceramic touchForm Function Finland 2001:4Hannele Nyman
  • 2001Vaikeimman keramiikan kesyttäjä回顧展の評。Helsingin Sanomat 10月20日Leena Honkavaara

Collections

  • フランチェスカ・マシッティ・リンドの全作品

    Francesca Mascitti-Lindh

    全作品

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    公開 15点

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