20世紀後半のフィンランド陶芸界で、長らく“影の存在”だった作家がいます。彼女の名はフランチェスカ・マシッティ=リンド(Francesca Mascitti-Lindh)。イタリアに生まれ、フィンランドの名門アラビア社で43年間にわたり活躍した知られざる巨匠です。今回のWeb展示会では、彼女が1970年代以降に取り組んだ壁面レリーフ作品を中心に16点を厳選してご紹介します。二つの文化的ルーツ(イタリアとフィンランド)を背景にした独特の作風は、素朴さと温かみ、そしてどこか古代遺跡を思わせる力強い存在感が共存しています。近年、フィンランド国内で「偉大だが無名の陶芸家」として再評価が進むマシッティ=リンドの作品世界に、ぜひ足を踏み入れてみてください。
スウェーデン紙『Hufvudstadsbladet』
“偉大だが無名の女性陶芸家”
略歴・背景
1931年、イタリア中部アブルッツォ州に生まれたフランチェスカは、16歳でフィンランドに渡り、アラビア社(Arabia)アート部門に迎えられてからは、一貫して多彩な陶芸作品を手がけました。独創的な花瓶や食器だけでなく、特に1970年代以降はレリーフや陶彫塑によるアートピースを数多く創作。
アラビア社在籍中にはイタリアやアメリカなど世界各地の陶芸コンクールで受賞を重ね、ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめ、欧米各国の主要美術館に作品が収蔵されるなど、高い評価を得ています。
作品の特徴:壁面レリーフに宿る二つの故郷
マシッティ=リンドのレリーフ作品は、フィンランドの土を用いながらも、地中海の気候と光を感じさせるような色彩と造形が特徴です。ザラリとした質感や押し当てられた植物の痕跡、抽象的にアレンジされた木々や鳥のモチーフなど、自然への深いインスピレーションが作品全体に息づいています。
複数の粘土を組み合わせる大胆な手法やマットなアースカラーの釉薬づかいは、北欧モダンデザインの中でも異彩を放ちます。評論家からは**「彼女のレリーフ作品にはフィンランドではなく、暖かな地中海の香りを感じる」**と評され、異文化融合の結晶として語られてきました。
再評価される理由──外部が語る魅力
“偉大だが無名の女性陶芸家”
スウェーデン語紙『Hufvudstadsbladet』は、マシッティ=リンドをそう見出しで紹介しました。長らく同時代の著名作家の影に隠れてきたものの、その芸術性と技術力は専門家の間で高く評価されています。
“A Star is born. This exhibition gives her due after years in the shadows.”
(「新たなスターの誕生だ。長らく埋もれていた彼女が、ついに正当な評価を受けるときが来た。」)
欧州の美術雑誌では、再評価の気運が高まる姿をこう評しています。
展示作品の見どころ
今回ご紹介する16点の壁面レリーフ作品は、主に1970~80年代に制作されたもの。葉や花弁を直接粘土に押し当てて模様を刻んだ作品や、幾何学的なパーツを組み合わせた抽象的レリーフなど、いずれもマシッティ=リンドらしい大胆さと繊細さが同居する逸品ばかりです。それぞれ一見すると荒削りなようでいて、釉薬や土の組み合わせから想像以上に複雑で繊細な表情を見せます。オンライン上で詳細画像を拡大してご覧いただくと、作者の息遣いまで伝わるような手仕事の痕跡を発見できるはずです。
1931年 イタリア・アブルッツォ州に生まれる
1949-1952年 フィンランド・ヘルシンキ工芸学校で陶芸を専攻
1955年 アラビア社アート部門に招聘
1973年 ファエンツァ国際陶芸コンクール 金メダル受賞
1989年 アラビア社を退職、その後も独自に制作を継続
2001年 アラビア美術館で大規模回顧展「Arbetsglädje(働く喜び)
ニューヨーク近代美術館 (MoMA)
ロンドン V&A(ヴィクトリア&アルバート博物館)
ファエンツァ国際陶芸博物館 (イタリア)
ヘルシンキ・アラビアミュージアム (フィンランド) ほか多数
1956年 アメリカ現代工芸美術館 最優秀賞
1973年 ファエンツァ国際陶芸コンクール 金メダル
1977年 ファエンツァ国際陶芸コンクール 金メダル(2度目)
2003年 イタリア連帯の星勲章コメンダトーレ受章
再評価のいま、作品を迎える
“Minun täytyy olla toimelias. Minun täytyy saada luoda!”(私は創作せずにはいられない。創作なくしては生きられないのです。)
フランチェスカ・マシッティ=リンドはそう語り、**「創造する喜び (Arbetsglädje) があってこそ良い作品が生まれる」**と生涯にわたって唱え続けました。釉薬の流れや土の歪みなど、計画を超えた「偶然の効果」を受け入れながら、新たな表現へと果敢に挑み続けたのです。このような姿勢が近年改めて注目され、フィンランドをはじめとする国際的な美術界で再評価の気運が高まっています。長らく“知られざる巨匠”と呼ばれてきた彼女が、いま多くのコレクターや研究者から熱い視線を浴びているのです。そして今回の展覧会では、レリーフを中心に16点の作品を取り揃えました。一点物のユニークピースが中心で、写真をクリックすると詳細情報や購入ページに移動できます。もし心惹かれる作品がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
展覧会出品作品一覧
レリーフをはじめとする全16点のコレクションをご紹介します。写真をクリックすると詳細情報や購入ページへ移動できます。